78話:記憶のまなざし

    武満 徹◇エア(フルート無伴奏)/瞳を閉じて(ピアノソロ)

ここしばらく古典派、バロックが続きましたので時代を一気に飛びまして1900年代の現代音楽をご紹介したいと思います。

武満 徹(たけみつ とおる、1930−1996)は、現代音楽の分野において世界的にその名を知られ、日本を代表する作曲家です。

武満氏は終戦直前に聞いた、リュシエンヌ・ボワイエの歌うシャンソン「聴かせてよ、愛のことばを」衝撃を受けました。それが彼が音楽家になろうとした最初のきっかけのようです。

1951年に多方面の芸術家からなる集団「実験工房」結成メンバーに加わります。その最初期の作風はメシアンやベルクの強い影響を受けているのが分かります。

1957年「弦楽のためのレクイエム」を創作し、その音源を1959年に来日したストラヴィンスキーNHKで聴き、絶賛し、後の世界的評価の契機となります。そして、1960年以降は映画音楽も創作するようになっていきます。

1967年にはニューヨーク・フィル125周年記念の作曲をバーンスタインに依頼され、琵琶と尺八とオーケストラの構成による「ノヴェンバー・ステップス」を作曲しました。

晩年にはがんで数ヶ月もの間入院しますが、退院後に下記にご紹介する無伴奏フルートの「エア」作曲、しかしこれが遺作となります。入院先の病院では武満氏が大好きだったバッハの「マタイ受難曲」ステレオで流れていたということです。

Toru Takemitsu: Air for Solo Flute ◇Performed by John McMurtery
http://www.youtube.com/watch?v=FQ017iBbwSE&feature=related
    



★武満氏について調べていましたら実に興味深い記事を見つけましたので添付します。

   
      ルドン◇Cyclops キュクロプス
オディロン・ルドン(Odilon Redon,1840−1916)フランスの画家。
    〜〜〜ルドンの作品に登場する「目」について〜〜

「僕自身、いつもルドンの(作品に描かれた)ああいうまなざしを見ると、何を見ているのかなと自分に問いただしているんだけど、たぶん僕は、これは記憶のまなざしではないかと思うんですよ。それは人類、人間がこの地上に生まれてきて最初に見た世界の風景とかですね、そういういわば生命の神秘というか。今、人類は知的に開発されてかなりのところまできているわけだけども、原始の記憶というか、モノがまだはっきり形をなさない時代の記憶を、僕たちはまだ持っているんだろうと思うんです。そういう何か目に見えないもの、しかしそれは世界を作っている非常に大きな、大事なもので、たぶんルドンという画家は常にその(作品に描かれた)まなざしを通して、そういうもんを見たかったんではないかと」

「僕も作曲家、つまり最初の聴き手としてね、ルドンと同じように、見えてないものを見たいし、今聴こえてない音をね、聴き出したい。音を組み合わせて音楽を作るっていうんじゃなくて、ふと何かある音を聴き出したいなっていう気持ちが強いです。ルドンを見ていると、非常にそういう気持ちにさせられる」

武満徹【私とルドン】(日曜美術館 1980年放送)より

    
       ルドン◇les Yeux Clos 瞳を閉じて

同じくルドンの絵画で武満氏がその絵を見てイメージして作曲したピアノソロを動画としてご紹介します。今回は音と楽譜をおっていく動画を選びました。ピアノ弾きの皆さんには興味の大きいところではないでしょうか。

Takemitsu - Les Yeux Clos II
http://www.youtube.com/watch?v=kIZQWTP34-E
    

   くみこpiano・ youtube チャンネル 
今秋予定、10月2日のリサイタル曲からの1曲です。宜しかったらお聞き下さい。

ベートーベン◇ピアノソナタ「月光」より1楽章 他http://www.youtube.com/user/kumikopiano#g/u
   

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