75話:新しいオペラの様式を取り入れた音楽家

   グルック◇歌劇<オルフェオとエウリディーチェ Orfeo ed Euridice >より〜精霊たちの踊り〜

今日は前回ご紹介した音楽家ハイドン」の生まれ故郷であるオーストリア、そしてフランスでも活躍した「グルック」の作品を取り上げてみたいと思います。 クリストフ・ヴィリバルト・グルック(Christoph Willibald Gluck, 1714−1787)は現在のドイツに生まれ、現在のオーストリアとフランスで活躍したオペラの作曲家。バレエ音楽や器楽曲も手懸けました。

ヨーロッパ中を広く旅して、マリア・テレジアの宮廷楽長の地位を得、ウィーンに定住します。 ウィーン滞在中に、最も有名なバレエ音楽ドン・ファン Don Juan 」(1761年)と、この代表作の歌劇「オルフェオオルフェウス)とエウリディーチェ」(1762年、48歳)を作曲しました。

今日ご紹介するこの作品では、オペラの新しい様式についてのグルックの考え方が表面上に展開されています。それは出演するスター歌手よりも「作品」を重視したという点です。

具体的にどういう事かと言いますと、通常は伴奏が無く「口上状況説明、感情表現、叙唱、朗唱(台詞を言っているように歌う場面を思い描いて下さい)するような「レチタティーヴォ」をほんとんど無くし、劇的に構成されたレチタティーヴォ・アッコンパニャート「オーケストラ伴奏のみ」、またはセッコ「チェンバロ伴奏のみ」にして演技にそれらを割り込ませないようにする、という事なのです。それが、オペラ改革につながりその結果、より流麗で劇的な作曲様式は、ワーグナーの楽劇の先駆者とも言われています。

また今日お届けする「精霊たちの踊り」は、オペラの第2幕第2場で天国の野原で精霊たちが踊る場面で演奏される有名な楽曲として広く知られています。のちにヴァイオリニストのクライスラーがヴァイオリン用に編曲し、「メロディ」というタイトルで作曲しました。

何とも言葉にして表すのが難しい美しさを秘めたこの曲、中間部に哀調を帯びた旋律をもつ3部構造の清楚で優雅な趣があり、旋律はオペラから独立してフルートの名曲として現在も演奏されていますね。

〜あらすじ〜

 神話時代のギリシア
 類い希なき歌い手・オルフェオオルフェウス)は、最愛の妻エウリディーチェ(トラキアのニンフ、木の精)と結婚式を執り行ったばかりのある日、エウリディーチェは暴漢に襲われ逃げ惑ううちに一匹の蝮を踏みつけてしまう。その毒がまわりあっけなく命を落とす。オルフェウスが女の死を嘆いていると、その嘆きの歌に心を動かされ、ゼウスはオルフェウスの元にアモーレを使者につかわした。「地下にある死者の国へ行き、妻を連れ戻してもよい」という許しを与える。「ただし・・・」それには条件が付いていた。「ただし、再び地上に帰り着き、日の光を見るまでは、決して振り返って彼女の姿を見てはならない。そのわけを彼女に説明してもいけない・・・。」

          
   パスカル・アドルフ・ジャン・ダニヤン・ブーヴェル◇オルフェウスの嘆き
    Pascal.Adolphe-Jean-Dagnan.Bouveret◇Death of Orpheus(1876)


オルフェオは、竪琴を持って地下の国へ降りてゆく。彼の行く手を遮るものを、その歌で魅了しながら、ついに、地下を治めるプルートの許しを得て、妻・エウリディーチェのいるエリジウムの野に辿り着く。エウリディーチェと再会したオルフェオは、彼の後ろをついてくるように一言だけ口をきき、暗く長い道のりを歩く。しかしふと彼の心に(本当に彼女後ろからついて来てくれているのだろうか・・)と疑惑に襲われる。とうとう我慢しきれず後ろを振り返る。

     
       コロー◇エウリディーチェを死の国から連れ出すオルフェオ
       Jean-Baptiste Camille Corot 1796-1875 19世紀 フランス画家


確かにエウリディーチェはすぐ後ろにいたが、次の瞬間にエウリディーチェは、地下の国へ引き戻されてゆく・・・。そして絶望と後悔がオルフェウスを襲う。他のニンフ(妖精)の女達がオルフェを慰め優しくするが彼は何も受け入れなかった。するとニンフ達はオルフェウスを憎み、また亡きエウリディーチェも同じニンフだった事もあり嫉妬も伴いオルフェを八つ裂きにしてしまう。やがて彼の頭部と竪琴が島に漂着する。

     
     ウオーターハウス◇オルフェオの首を見つけたニンフ達
      Jhon William Waterhous(1849-1917)イギリス画家


と、神話はいくつか説がありますが、いずれにしても残酷な結末。しかし舞台では・・

今は永遠に妻を失ったと思ってうなだれるオルフェオの前にアモーレがあらわれる。オルフェオの深い愛に打たれたアモーレは、エウリディーチェに再び生命を吹き込む。よみがえるエウリディーチェ、喜びと光が二人を包む・・・。

やはり、八つ裂きが結末の舞台は後味が悪いですね(笑)ピアノソロのこの曲は近いうち私も形にしたいと思います。

室内楽とフルートソロ

http://www.youtube.com/watch?v=BGkOf64pJ5s

☆ヴァイオリン:Jascha Heifetz

http://www.youtube.com/watch?v=tenI_FyFeZ0&feature=related

☆ピアノ:nelson freire (ラフマニノフ編曲)

http://www.youtube.com/watch?v=IW1FlZpELE0&feature=related

    



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     自分自身の演奏ですが聴いて下さったら嬉しいです
    http://www.youtube.com/user/kumikopiano?feature=mhw5
       バッハ◇フランス組曲第6番よりジーグ 他
    

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