94話:式典音楽 その2



ヘンデル◇王宮の花火の音楽

この曲は1748年に作曲されましたが、言うまでもない事ですが、もう一つの作品「水上の音楽」と並んで祝典音楽としてヘンデルの著名な管弦楽作品となっていますね。

さて、ヘンデルはイギリスに帰化した直後1727年に正式に王室礼拝堂付作曲家、また宮廷作曲家に任命されました。毎年ロンドンでは公園や河川敷で花火大会が開催されました。また、何かお祝い事があるたびに、そのために祝典音楽が書かれ演奏されることもよくあることだったのです。

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山下清(1922−1971 日本画家・貼絵)◇諏訪湖の花火大会

花火のルーツはもともとは中国が発祥の地で14世紀ごろイタリアのフィレンツェで広まったとの事。日本に渡ったのは丁度江戸時代だったのですね。

今日の作品に関する出来事として、1740年から1748年まで、ヨーロッパではオーストリア継承戦争という、複数の国を巻き込んだ戦争がありました。イギリスではこの戦争が終わった翌年の1749年に戦争終結を祝う多くの祝賀行事が催され、そのうちの一つに花火大会として4月27日にロンドンのグリーン・パークでこの「王宮の花火の音楽」が初演されました。

オーストリア継承戦争神聖ローマ皇帝カール6世は子宝に恵まれず、継承者に悩んでおり、そこに生まれた娘マリア・テレジア(アントワネットの母となる)にオーストリアハプスブルク家を継がせるため、女子の相続を認める詔書を欧州主要国に認めさせ、また帝位に女性も即位できるよう要求していました。しかし、フランス宮廷のルイ15世はハプスグルク家の弱体化の好機と攻撃を仕掛け、それが発展してこの戦争になった経緯があります。

 

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アンドレアス・メラー (1717−1780 ドイツ) 11歳のマリア・テレジア

この作品の編成は管楽器のみからなる大がかりなもので、特に野外で浪々と響くように苦心されました。オーボエ24本、ファゴット12本、トランペット9本、ティンパニ3台。そして初演の際にはされに増加されて100本の管楽器を鳴らしたそうです。

この「王宮の花火の音楽」は実際には花火が打ち上げられる前に奏される「序曲」から始まり、その合間に奏された複数の小さなダンス調の小品「ブーレ」「平和」「歓喜」「メヌエット1」「メヌエット2」から構成されています。

管楽器構成というと私たちはスクールバンド・・そう、ブラスバンドをすぐイメージします。特にマーチングバンドはパフォーマンスとしてフォーメーション等、華やかですが元々は戦争の士気を高めるための軍楽隊がルーツなのです。音楽も戦争の道具だったと思うと大変悲しいことです。また当時、音楽は皇帝、王様に気に入られるために宮廷用BGM、画家は肖像画を沢山残しました。本当に自分の表現したい作品だけ残していくのが実生活をしていくのに難しい、これは昔も今も同じですね。

2「ブーレ」◇ターフェルムジーク・バロックオーケストラ


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今日の1曲:ヘンデル◇アラホンパイプ ピアノトリオ(ライブ録音より

 ピアノ◆本間くみ子

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